人工透析前でも障害年金はもらえる?腎疾患で障害厚生年金3級を受給
「腎臓の病気で障害年金をもらえるのは、人工透析を導入した人だけ」
このように考えて、申請を諦めてしまっている方は少なくありません。
公的年金制度において、初診日に国民年金に加入していた場合(自営業や専業主婦など)に請求できる「障害基礎年金」は1級および2級のみであり、人工透析をしていない段階での認定は極めて困難なのが実情です。
しかし、初診日に会社員や公務員として厚生年金に加入していた場合は異なります。厚生年金独自の給付区分である「障害厚生年金3級」が設けられており、人工透析を実施していない保存期の段階であっても、検査数値や就労の制限状況によって受給が認められる可能性があります。
体調の悪化により残業ができなくなったり、以前のような業務を続けられなくなったりして収入が減少している場合、障害年金は生活を支える大きな支えとなります。本記事では、人工透析導入前の段階で障害厚生年金3級を受給できたAさんの事例を通じて、受給要件や申請時のポイントを分かりやすく解説します。
ご相談者様の状況
お名前: Aさん(仮名・50代男性・会社員)
傷病名: 慢性腎不全(慢性糸球体腎炎に起因)
年金加入歴: 初診日から現在まで継続して厚生年金保険に加入
自覚症状・生活状況: 強い全身倦怠感、下肢の浮腫(むくみ)、貧血症状。主治医からは塩分・たんぱく質制限およ び激しい運動の禁止を指示されている。
就労状況: 以前は営業職として時間外労働(月40時間程度)を行っていたが、体調悪化に伴い事務職へ配置転換。残業は免除され、重い荷物の運搬を伴わないデスクワークのみに従事している。
直面した課題
1. 「人工透析前は申請できない」という誤解
Aさんは主治医から「透析を始めたら年金の対象になる」と聞いており、まだ透析をしていない自分は申請できないものと思い込んでいました。医師側も日常の診療が中心であり、障害年金制度(特に厚生年金3級の基準)に精通しているとは限らないため、診断書作成の相談を躊躇していました。
2. 約8年前の初診日の証明書(受診状況等証明書)の取得
Aさんが健康診断の尿検査で異常を指摘され、初めて医療機関(クリニック)を受診したのは約8年前でした。医療機関のカルテ保存義務期間である5年を経過していたため、当初は初診日の証明が発行できるか確認が取れず、証明書取得が難航する懸念がありました。
3. 会社に勤務していることによる「障害状態」の証明の難しさ
Aさんは内勤への転換後も休職せずフルタイム勤務を継続していたため、審査機関から「通常どおり就労できているため、障害状態には該当しない」と判断されるリスクがありました。
当事務所によるサポートと解決策
1.障害認定基準に基づく客観的数値の整理
障害認定基準を確認すると、「軽度異常」に該当し、一般状態区分表も該当する箇所を確認しました。
2. 初診日を特定するための客観的証拠の収集
初診のクリニックに確認を依頼したところ、幸いにも当時の電子記録の一部が保存されていました。さらに補強資料として、当時の会社の健康診断結果通知書(異常所見と要再検査の記載あり)、クリニックを受診した時期のお薬手帳の控え、現病院への紹介状の控えを揃え、初診日を立証しました。
3. 診断書記載の依頼と職場での配慮状況の言語化
主治医に対し、法令上の認定基準(血清クレアチニン値による基準)が記載された公的資料を提示し、透析導入前であっても3級の判定対象となることを共有しました。
また、Aさんが現在就労を継続できているのは「会社の配慮(残業免除、身体的負荷の低い業務への転換、通院のための有給休暇取得の容認)」があるからこそ成り立っている実態を、時系列と具体的な数値(残業ゼロ時間、1日の歩行距離の制限など)を交えた書面にまとめ、主治医にお渡ししました。主治医も実態を理解され、診断書の「日常生活状況」や「現症時の就労状況」の欄に、制限事項を正確に反映してくださいました。
4. 「病歴・就労状況等申立書」の精緻な作成
初診時から現在に至るまでの自覚症状の推移、日常生活における倦怠感による休養時間、業務上で受けている具体的な制限内容について、診断書の内容と矛盾が生じないよう整合性を担保しながら作成しました。
まとめ
人工透析を行っていない段階であっても、腎機能の低下によって日常生活や就労に制限が生じている場合、初診日に厚生年金に加入していた方であれば障害厚生年金3級を受給できる道が開かれています。
障害年金は、ご自身で請求手続きを行わなければ受給することができません。また、過去にさかのぼって受給できる期間には法令上の時効(原則5年)があるため、請求が遅れると本来受け取れるはずであった年金を失ってしまう恐れがあります。
「自分は対象になるのか」「初診日の証明が見つからない」「会社に勤めながら手続きを進めるのが難しい」など、少しでもご不安がある場合は、一人で抱え込まずに当事務所までお気軽にご相談ください。専門知識を持つ社会保険労務士が、誠心誠意サポートいたします。
※本事例は、個人情報保護の観点から、趣旨や手続きの本質を損なわない範囲で一部の事実関係および個人属性に変更を加えて記載しております。
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