人工透析を始められた方やご家族へ
突然の激しい体調不良に襲われ、病院に救急搬送されてそのまま人工透析が始まってしまった――。このような過酷な経験をされ、これからの生活や仕事、医療費の負担に大きな不安を抱えている方は少なくありません。
日本の公的年金制度には、病気やケガによって日常生活や就労に制限が生じた方を支える「障害年金」という制度があります。人工透析を行っている場合は、原則として障害等級2級に該当し、年金を受給できる可能性が非常に高いとされています。
しかし、障害年金は「いつの時点の障害状態で請求するか」によって、受給できる年金の総額や、受給が始まる時期が大きく変わります。本記事では、急性尿毒症から慢性腎不全となり血液透析を継続することになったAさんの事例を通じ、障害年金請求における「障害認定日」の特例をご説明します。
症状や申請に至るまでの経緯
Aさん(仮名)は、それまで大きな病気をすることなく日々を過ごしていましたが、ある日、急激な食欲不振や全身の倦怠感に悩まされるようになりました。数日後には激しい嘔吐を繰り返し、尿がほとんど出なくなる「乏尿」の症状が出現。意識が朦朧(もうろう)とした状態に陥ったため、ご家族が救急車を呼び、救急搬送されました。
搬送先の病院での検査の結果、極度の腎機能障害と高度の貧血が確認され、命の危険がある「急性尿毒症」と診断されます。直ちに緊急透析が施行されましたが、腎機能の改善は見られませんでした。より精密な検査と加療を行うため、数日内に大学病院へと転院。そこでの精査によって、Aさんの腎不全は回復が不可能な状態であると判断され、「慢性腎不全(末期)」との確定診断が下りました。その後、週3回、血液透析を永続的に継続することとなりました。
体調が少し落ち着いた後、Aさんとご家族は今後の生活費や医療費に不安を覚え、障害年金の申請を検討し始めました。
直面した具体的な課題と、弊所によるサポート・解決策
障害年金を申請するにあたり、Aさんは以下の2つの大きな壁に直面しました。
通常の障害認定日(1年6ヶ月)との勘違いによる手続きの遅れ
一般的に、障害年金は「初診日から1年6ヶ月が経過した日」が障害認定日となり、その日以降でなければ請求ができません。Aさん自身もその認識でいたため、初診から数ヶ月しか経っていない段階では手続きができないと思い込んでいました。 しかし、障害認定基準には特例があり、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3ヶ月を経過した日に障害認定日が到来すると定められています。弊所にご相談いただいた際、この特例を丁寧にご説明し、Aさんの場合はすでに障害認定日が到来していることをお伝えしました。
病歴・就労状況等申立書の作成と医師への正確な伝達
一般的に腎疾患は、会社の定期健康診断などで尿蛋白等を指摘され、自覚症状がないまま10年、20年という長い歳月をかけてゆっくりと腎機能が低下していくケースが大半です。その場合、障害認定日(初診から1年6ヶ月後)の時点ではまだ透析に至っておらず、自覚症状もないため、当時の診断書を取得しても2級の基準を満たさないことが多く、「障害認定日請求」ができるケースは極めて稀です。 しかしAさんの場合は、自覚症状がなかったものの、急激に急性尿毒症を発症して緊急透析となった「慢性腎不全の末期状態」であったと考えられます。初診日と透析開始日がほぼ同時期であり、人工透析による短縮された障害認定日(3ヶ月経過日)の方が、通常の障害認定日(1年6ヶ月経過日)よりも早く到来します。 弊所では、この「急性悪化による末期発症」という事実を客観的に証明するため、搬送時の救急搬送記録や大学病院での精密検査結果を入念に精査しました。そして、医師が記載する診断書に当時の詳細なデータが正確に反映されるよう、必要書類を整理し、Aさんの「病歴・就労状況等申立書」についても、発症から緊急透析、慢性管理に至るまでのプロセスを1日の矛盾もなく具体的に記述しました。
受給決定までの流れ
実際の請求手続きを行う時点は、障害認定日から数ヶ月が経過していましたが、弊所のサポートのもと、事後重症請求(請求日以降の年金のみを受け取る方法)ではなく、「障害認定日請求」を行いました。
提出後、日本年金機構による審査を経て、Aさんには「障害基礎年金2級」の受給権が認定されました。事後重症であれば手続きをした翌月からの支給となりますが、障害認定日請求が認められたことで、遡って受給権が発生。Aさんは、認定日以降の分の年金を一括して受け取ることができ、経済的な不安を大幅に解消することができました。
まとめ
人工透析を導入された方は、生活が一変し、週3回の通院など体力的にも精神的にも大きな負担を抱えられます。その中で、複雑な公的手続きを個人やご家族だけで進めることは、多大な労力を伴います。
「自分はいつから請求できるのだろう?」「健康診断で言われなかったのに突然透析になったけれど、遡って受給できる?」など、少しでも疑問や不安をお持ちの方は、まずは一度、弊所までお気軽にご相談ください。
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